本作品「Vell」は、クラゲの拍動を音の生成・変容に用いる、マルチスピーカー構成のサウンドインスタレーションである。クラゲが示す固有のリズムや身体運動を、単なる計測対象としてではなく、空間に音を立ち上げるための生きた駆動源として扱う点に特徴がある。
作品では、クラゲの拍動データをWebCamera2台を用いてリアルタイムに取得・3D解析し、そのタイミングや変化を音響パラメータへ接続することで、クラゲの生理的な運動と音の振る舞いが連動する環境を構成する。複数のスピーカーに音を分散配置することで、音は一点から鳴るのではなく、クラゲの拍動に呼応しながら展示空間内を移ろい、拡散する。
Vellが目指すのは、クラゲを映像的・象徴的に再現することではなく、その拍動という生命活動を媒介に、人間の聴覚と生物の時間性を接続することである。規則的に見えながらも微細に揺らぐ拍動は、固定的なテンポや反復から離れた音楽的な時間を生み出し、鑑賞者に生物との共存や非人間的な知覚のあり方を想起させる。本作は、現時点ではVer.1となるプロトタイプである。クラゲの拍動を検出し、マルチスピーカー空間における音の生成と定位の変化へ接続する基本的なシステムを構築しながら、生命の運動が空間全体の聴取体験をどのように変え得るかを検証している。
今後は、拍動データと音響空間との関係をさらに精緻化するとともに、スピーカー配置、音の移動、展示環境に応じた聴取体験を発展させていく。クラゲが単に音を制御する存在ではなく、その存在と運動が空間の時間や知覚そのものを変容させるような、Vellの完成形を目指して制作を継続する。クラゲの拍動を連続的な音響制御信号へ変換するKFO(Kurage Flux Oscillatior)の取り組みを基盤としている。
Ver.1については、慶應SFC内で開催されたx-Music Labの最終発表・展示会である「Sound End。」にて、3日間の展示を行った。
Direction, Sound Design, Hardware, Programming, Designer, Camera Direction: Kenshiro Taira
展示「Sound End。」ホームページ:https://soundendo2026.studio.site